AI時代のマネジメント小説

残りの10%

AIエージェントが仕事の九割をこなす時代、人間に残る一割とは何か。

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『残りの10%』の表紙:川辺の灯台を岩の上から見つめる三人
次の章第2章 新参者二年ぶりに、タットはやったことのない仕事を任される。そして初めて、エージェントのほうが彼より多くを知っていた。ベトナム語の原書が先行しています。原書は第5章まで、日本語版は第1章まで公開中。
原書は毎週月曜0時(ベトナム時間)に公開noteでフォローする
「ハイダン社では、仕事の九割をエージェントがこなす。残りの一割を引き受けているのが、タットだった。」
  • 90の点:エージェントがこなす仕事
  • 10の点:人間の手に残る仕事
物語

AIエージェントを貸し出す会社と、その裏で働く十二人

ハイダン社は、AIエージェントを月極めで貸し出している。顧客は一万社を超える「ひとり社長」の会社だ。毛糸の店、歯科医院、小さな縫製工房。社長はどこもひとりきりで、帳簿をつけ、客に声をかけ、真夜中のメッセージに返信するのはエージェントの一団である。

そのプラットフォームの裏にいる生身の人間は、机二列を埋めるほどしかいない。彼らはエージェントの手に負えない案件を引き受ける。そして、ふと考えはじめる。機械が自分の仕事の九割をこなせるなら、残りの一割とはいったい何なのか。

本書は、トヨタのカイゼンをはじめ、人がともに働くことをめぐる古くからの教えを、その書き手たちが思いもしなかった世界に置き直してみる。すると多くは、かえって確かさを増していく。

二列目の机から

物語を最後までともに歩く三人

主人公

チャン・タン・タット

入社二年。仕事が速く、処理速度のランキングは四位。すべてが順調で、手帳に書くことがもう何も残っていない。

創業期からの古株

グエン・ルック・シー

ハイダン社の最初期からいるひとり。口数は少ないが、三度目の報告をせざるをえなかった顧客を、ひとり残らず覚えている。

チームリーダー

チュン

働きはじめて二十年近く。人だけで回していたコールセンターの時代から、エージェントがほとんどをこなす今までを見てきた。いつも背の擦り切れた古い本を持ち歩き、会議テーブルのない場所でしか話をしたがらない。

各章のはじまり

ハイダン社の物語

難しい案件、ひとつの会議、川辺の午後。

物語のあいだに

理論コラム

物語の隣に、検証を重ねてきたマネジメント研究を置く。トヨタのカイゼンから心理的安全性まで。

各章のおわり

あなたへ

自分の仕事に持ち帰るための、いくつかの問い。

目次

ひとりの人間から会社全体へ、全二十章

日本語で読める日本語訳は準備中公開中ほかの言語でも読めます近日公開

第一部 まだ痛みを感じる人

  1. 01痛みの在りかカイゼン/小さな勝利
  2. 02新参者ダブルループ学習/意図的な練習
  3. 03今日も昨日と同じ現状維持バイアス/成長マインドセット
  4. 04アイデアを売る心理的安全性/ジョブ理論

第二部 小さなチーム、大きな仕事

  1. 05難しい仕事は磁石になる目標設定理論/Aに報いてBを望む愚
  2. 06自分と違う人31%公開中多様性は能力に勝る/集団浅慮
  3. 07正しい人をバスに乗せる「まず誰を、それから何を」/集合知
  4. 08すぐ褒め、本気で叱る徹底した率直さ/公正な文化
  5. 09やり方ではなく目標を渡すミッション・コマンド/内発的動機づけ

第三部 会社が大きくなるとき

  1. 10一番手の病イノベーションのジレンマ
  2. 11職人職人/仕事への誇り
  3. 12石を探りながら川を渡る情報が揃わないなかでの素早い決断
  4. 13顧客はKPIではないグッドハートの法則
  5. 14大きくなることへの恐れ組織の成長段階
  6. 15文化が隙間を埋める文化の三つのレベル

第四部 残りの一割

  1. 16自動化の皮肉自動化の皮肉
  2. 17よく聴く人人の変化を支える聴き方
  3. 18ほどよい恐れ「パラノイアだけが生き残る」
  4. 19最後列現場を歩くマネジメント
  5. 20次の人内側から育つリーダー

エピローグ 意志あるところに。川辺の、もうひとつの午後。けれど今度、古い本を手にしているのはタットだ。

試し読み・第1章

痛みの在りか

三度目の報告

ハイダン社では、仕事の九割をエージェントがこなす。残りの一割を引き受けているのが、タン・タットだった。

ハイダン社はAIエージェントの貸し出しを生業にしている。社名はベトナム語で「灯台」を意味する。顧客は、ここ数年で雨後の筍のように現れた新しいかたちの企業――社員がひとりしかいない会社だ。CEOはただひとり。その周りを、月極めで借りたエージェントの一団が固めている。経理エージェントが帳簿をつける。営業エージェントが客に声をかける。サポートエージェントが真夜中のメッセージに返信する。仕入れエージェントが毛糸を、布を、印刷用紙を発注する。そんな会社が一万社以上、ハイダン社のプラットフォームの上で昼も夜も動いている。一方、その裏側にいる生身の人間は、机二列をようやく埋めるほどしかいなかった。

チャン・タン・タットは二列目の席、顧客オペレーションチームにいた。彼の仕事は、エージェントが自力で解決できなかった案件や、エージェントの対応にCEOが納得しなかった案件を引き取ることだ。そうした案件はどれも、短く乾いたチャイムとともに画面に現れる。スプーンでグラスの縁を軽く叩いたような音だ。この二年、それが一日におよそ百回。暗がりで横になっている夜にも、頭のどこかでその音が鳴り、そして消えることがあった。

仕事は速かった。CEOとエージェントの長いやりとりも、数秒ざっと目を走らせるだけで、エージェントがどの一文で取り違えたのかがわかる。設定を直し、チケットを閉じ、次の案件を受ける。先週のランキングでは、処理速度で四位に彼の名前があった。一番ではない。けれど、彼について苦情を言った者も、これまでひとりもいなかった。

すべては順調だった。そして、それこそが問題だったのだ。ただ、そのときの彼はまだ知らなかった。

入社初日、彼は緊張のあまり、エージェントの推論を一行一行、推理小説でも読むように追ったものだ。エージェントが陥りがちな間違いのパターンを手帳三ページにびっしり書きつけ、営業エージェントがなぜ妙に堅苦しい口調で客に挨拶するのか、研修担当の女性に何度も尋ねた。いまその手帳は引き出しの中で眠り、表紙にはうっすらと埃が積もっている。もう開くこともない。書くことが、もう何もないのだ。

日本語版は第1章まで公開中。続きは英語版とベトナム語の原書で読めます。

第1章のつづきを読む英語版をAmazonで予約
各章のほかに

タットの手帳

タットが第1章までに書き留めた3つのことを、一ページにまとめました。日本語版の章が増えるたびに書き足されます。

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物語を追いかける

一章ずつ、物語は進む

読み終えて、チュンさんに言い返したくなったり、タットの肩をもちたくなったりしたなら、この本は役目を果たしたことになる。

本英語版 The Last 10% は2026年12月31日発売英語版をAmazonで予約
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